飼いバスの啓示  no3

その壱
寝付けない夜など、水槽の前で空き缶などを叩いてみる。
底で眠っているバスがその音に反応して、水面近くで
「エサくれダンス」を披露する。

この缶の音を低い音から高い音まで
色々と試してみた。
水中のルアーが発する音ではないので、
ルアーにそのまま適応できないが、
やはり高音のほうが直ぐに反応する。


その弐
それに気付いたのは、コーヒーを入れているときだった。
いつもコーヒーにブライトを入れようとすると
バスがやたらエサくれダンスをする。

「コーヒー好き?」とも思ったが、そんな訳はない。
ある日、カレーを食べるべくスプーンをヒラヒラさせていると
底に居たバスが猛烈に水面でエサくれダンスをする。
もう必至である。
スプーンを隠すと少しおさまるが、
再びヒラヒラさせると「もうたまらん」状態になる。

「うーん、スピナーベイトは効くはずやね」と思った。

 

その参
バスが20センチに満たない頃、一緒にザリガニも二匹水槽に入れた。
バスはどの程度の大きさのザリガニを食べるか見てみたかったのだ。

このザリガニは12センチから15センチまで育った。
バスの体長の半分かそれを少し越えていた。

ザリガニは当初、このチビバスよりも強い存在であった。
バスにやったエサをひったくることもしばしば。
そして数ヶ月で、少し体の小さい方のザリガニが
でかい方に殺され喰われてしまった。

また、
コケ取りにと入れたプレコを挟み殺された時は、
ちょっと憎くもあった。
挟まれたプレコを助けるべく水槽をガンガンと叩いたが
プレコは挟まれたままである。
「殺されるっ!!」
と思って、夢中で手元にあったウィスキーのボトルで
水槽を叩いた。
初冬の頃だ。
ボトルが勝った。
ザリガニは手を離したが、水槽は割れて
あたりは水浸しである。
なんとも情けない話であった。

そんなザリガニも我が家に来て1年が経とうとしていた6月。
ちょっと上京して2週間家を空けている隙に、
殻だけになっていた。

久しぶりに顔を見る俺様に向って
バスは水中で暴れまくり
エサくれダンスをする。
母に、
「エビやってくれた?」
と尋ねると。
「もちろん」と答えたが、
「じゃあ何故、ザリガニが食われた?」
と聞くと、
「時たま忘れた」と返答。
多分、時たましかエサをやらなかったのだろう。

バスは自分の半分強のザリガニならば
食べてしまうことが1年後に判明した。

 
inserted by FC2 system